銀星亭~Villa d'Etoile en argent~

題詠blog2009観賞 第2回「一日」



002:一日(鹿男) (もえないゴミ箱)
君なんていなくったって大丈夫一日がやや長くなるだけ


 ☆一読すると、明るくさらっと歌っている上の句に対して、下の句ではやや日が陰ったような印象を与えます。再読すると、下の句の一言一言が自己主張を始めます。
 「一日が」「やや」「長く」「なる」「だけ」。一言一言かみしめて読みたい下の句。そこに込められた喪失感と現実への直面性が、上の句の軽やかさにリアリティの生命を通わせます。



002:一日(繭) (みついろ)
好きということばねだれずくびかしげからだかさねた一月一日


 ☆「ことば」「くび」「かしげ」「からだ」「かさねた」とカ行音が要所要所に用いられ、全体的に乾燥した雰囲気の歌になっています。からだを重ねるという行為は潤いや湿度を感じさせる営みですが、この歌からはそういった気配や匂いは感じ取ることができません。「好き」という言葉が存在しないセックスは潤いをもたらすものではなく、より渇きが強まるだけなのかもしれません。
 結句の「一月一日」は端正な印象を与えます。が、それゆえに背徳的でもあります。改まった新年の初めに心と体が一致しないという不和を自覚させる構造的な歌です。



002:一日(英田柚有子) (阿呆船)
あたたかい手のひらだった ありえないくらい短い一日だった


 ☆過去回想の表現形を重ねることで、薄絹のようにはかない、しかし日だまりのようにあたたかかった記憶がリフレインしてくる。シンプルな言葉で語られているだけに、作者の心情が読み手に切実にとどいてきます。



002:一日 (斉藤そよ) (photover)
すばらしい一日でした オリオン座? はかりしれない憂いのうえに (2009.02.03)


 ☆この歌でまず印象に残ったのは「はかりしれない憂いのうえに」という下二句でした。どんな憂いのことなんだろう。先が見えない、それこそはかりしれない、暗雲曇として晴れない憂い、しかしその上にオリオンは確かに輝いていたんですね。歌全体としてはやはり下二句が主導権を握るのでしょうが、オリオンを境にしてちょうど明と暗が等分されている。観念的かつ絵画的な歌です。



002:一日(詠時) (短歌の花道)
花の名を一つ憶えて埋めていく今日の一日(ひとひ)の心の傷を


 ☆これはすてきですね!どんな花なのかな。傷ついた心によりそってくれるような、けなげで清らかな花なのでしょうか。音韻的にもバランスの良い構成になっているのではないでしょうか。



[うたう]002:一日(しろうずいずみ) (花と石ころ)
一日のおわりは近し すみやかにこの世界からログアウトせよ


 ☆普通ログアウトするにはログインしないといけませんよね。意識的な「ログイン」を必要とする世界ってなんでしょうか。「この世界」というのが私たちが通常活動している昼間の世界だとすれば、そこに入っていく時に意識的な「ログイン」を必要とするような人がこの歌の主人公なのでしょう。《現実世界》からログアウトした後にこそ、自分にとっての本当の世界が広がっている。現代を象徴するような歌です。



002:一日(片秀) (うつしよはゆめ よるのゆめこそまこと)
薄着して身軽になった四月一日(わたぬき)に君が嫌いと嘘をつこうか


 ☆軽快です。「わたぬき」という読ませ方にも成功している好例といえるでしょう。明るくさらっと、思い人への愛情を歌いあげたさわやかな春の歌です。



002:一日(たかし) (象の鼻)
 紙袋一日雨に濡れ続けやがて崩れる春のカタチに

 ☆やわらかな針降るような春雨に濡れた紙袋がやがて形を崩したと言っているわけですが、雨に濡れるという一般的には不快なはずの事象が、この歌ではちっとも不快な印象を与えません。
 雨さえも、それが春のものならば許してしまえる私たちの心模様をあらわしているようです。



002:一日(続木ミオ) (文庫箱)
「血と肉はうごいているの?ジシュテキに?一日人間ドッグでわかる?」


 ☆これはおもしろい歌です。もっともグッとくるのはやはり第三句の『ジシュテキニ?』ですよね。おもしろい視点と表現の勝利です。
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by yoizukisaene | 2009-12-24 13:45 | 題詠blog2009 | Comments(0)
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静岡在住の歌人です。日々詠んだ歌を載せています。
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管理人プロフィール
《生まれも育ちも》
1984年、静岡県富士宮市生。
2006年3月、熊本大学文学部文学科日本語日本文学分野卒業。現在、静岡県在住。
2006年「短歌研究」誌掲載。
2009年「平成万葉集」(読売新聞社)入集。
2012年 歌集「高天原ドロップス」(文芸社)上梓。

《専門と専攻》
専門:日本古典文学(平安朝和歌文学)
専攻:「古今和歌集」とその表現

《師弟関係》
師事 安永蕗子
弟子 小海碧架
    まみ


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