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銀星亭~Villa d'Etoile en argent~

「うたのわ」投稿短歌一覧まとめ

冬月はかくも気高く照らしたり壊れたセロを抱く少年を


やさしさがたりない冬の夕暮れに私を包んで降る雨の音

みぞれなす坂道ゆけば街灯のかそけくともるこのゆふべかも

フェルメールブルーの空に溶け果てて誰の邪魔をもしたくない朝

噴水の頂点(崩れ出すとこ)に神のちからがはたらいている

音もなく燃えてゆらめく雨の日のコバルトガラスの中の炎は

またいつか生まれるために死んでゆく そのための痛みは痛みにあらず

ならぬことを言ってしまったせいだろうぼくのやまびこかえってこない

神様のゆるしのようなひかりあれ さくらホテルの朝がはじまる

かぎりなき星のかなたの空までもつながっている ゆえに さみしい

最後まで優しい人でいてあげる それがいちばん残酷だから

棚のほこり きれいにしようと思えたら 傷も癒えたということでしょう

聡明な少女であった 傘さして桜雨降る中抱いたのは

しっとりとしめった髪に指を入れ目をとじるときわたしはひとり

体内にありしかれども 思ひきや 冷たきものよ 骨といふもの

せんせー、と、ひらがなでいつもぼくをよぶ生徒であった 春は遠くて

生れ落ちて春見しことも三十度われのさくらを燃やすはたれぞ

置時計投げつけし岩 砂となり すべてを呑んでいくまぼろしよ

赦しとは忘れることにあらざるや初霜踏んでゆく朝の道

慣れてるんだ、片手で外すなんてと言われ 返事をしないという返事する

来世には失敗しないぼくたちとして逢はむとぞおもふ 遠い八月

春霜に朝の光がさすときにすべての罪をゆるしてほしい

寄せ返す冬の渚に飛び込んでうたかたとなれ わが肉体よ

霜枯れのコンクリートに臥して待つ余命清算せらるることを

死にきれず恥辱の生をおくれとや たちのぼる黄泉のまぼろしを乞ふ

七草の生ふる野に出て雪待てば春をさまよふわれのたましい

世界はいま 急速に色を変えていき 藍色地点まで来ています

安曇野に行くはずだった 三人で快気祝いをやるはずだった

側面の翳りに舌をはわせたらすこしあまがみしてあげたいの

清浄な骨を砕いて撒きにいく ふるさと それは骨撒くところ

魂還りの山にかへらな すりきれた布に遺言書き終えたなら

秋月のすがしく照るを仰ぎつつ降りてゆきます夕暮れ坂を

心臓のカケイだそうで いつか俺も 心臓で逝くことのたしかさ

ママレード溶かし入れたら苦くなるってわかっているのにそれしかないの

いつかまた逢えないことは分かってた相合い傘にふる春の雨

神様は今日もスープをかきまぜる ウミガメの殻を積み上げながら

かんぺきな月だったのよ あなたみたいに そしてあたしもそこにいたのよ

天窓のガラスの中の針金は祝祭の朝の聖遺物かな

台風は今夜にかけて関東地方へ上陸します 泊めて下さい
by yoizukisaene | 2015-02-12 11:38 | 今日の歌
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静岡在住の歌人です。日々詠んだ歌を載せています。

by よいづきさえね
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《生まれも育ちも》
静岡県富士宮市生。
熊本大学文学部卒業。
2006年「短歌研究」誌掲載。
2009年「平成万葉集」(読売新聞社)入集。
2012年 歌集「高天原ドロップス」(文芸社)上梓。

《専門と専攻》
専門:日本古典文学(平安朝和歌文学)
専攻:「古今和歌集」とその表現

《師弟関係》
師事 安永蕗子
弟子 まみ


《著作一覧》
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