銀星亭~Villa d'Etoile en argent~

夏公演 「修学旅行」 を終えて(3)

 3回目の今回は、登場人物についてふれておきたい。

 主人公、ヒカルは班長でこの部屋の取りまとめ役。
 なんとか盛り上げようと一生懸命だが空回り。
 昼間の班別行動では道を間違え、集合時間に遅れて夜の外出がなくなるという
失敗もやらかしている。
 一生懸命で基本「いいひと」なので、憎めないキャラクターである。

 しかし劇中ではそんな「いいひと」ヒカルの無力さも示される。

 仲間同士のいさかいを収めようと間に入るが、ヒカルに力がないため、
 お互いの言い分を伝えるだけのメッセンジャーガールになってしまい、
 部屋の中の紛争は解決できない。

 誰も傷つけたくないし、もちろん自分だって傷つきたくない。
 きっと、だれだってそうだ。でもそれはとても難しいことなのだ。

 結局、ヒカルは同じ部屋の女子から、
 「そういう態度が一番腹立つ」と言われてしまう。


 「ごめんなさい・・・」


 うつむきながらつぶやくヒカル。

 私はここに戦後の日本の姿を見る。

 
 軍事力を放棄し、ひたすら平和外交に徹してきた、「優等生」日本。

 あらそいごとはよくないよ、けんかはよそうよ、と、
 国際社会に向かって訴え続けてきた日本。
 それはきっと、「いいこと」だったんだろう。

 でも、みんなにいい顔してきた結果、
 みんなから相手にされなくなることっていうのがあるのかもしれない。


 劇のクライマックスでヒカルは叫ぶ。


 「世界の中心でひとりぼっち!!」


 ヒカルに足りなかったものは何だったのだろうか。
 私たちは私たち自身のこととして考えさせられる。


 物語終盤、荒廃した部屋の中で呆然とするメンバーが残される。


 「わたしたち、これからどうしよう」とつぶやくノミヤに対し、ヒカルは答える。


 「大丈夫。明日があるよ。」


 私はここに、夜明けを、明日の希望を確信する、ヒカルの姿を見る。
 それはまさしく日本の姿である。

 東の水平線がひかるとき、この混迷した部屋にも夜明けがくる。


 やはり夜明けは、日出づる処の国からはじまるものなのだ。

 
 願わくはヒカル(日本)が、この部屋(世界)に、
 希望のヒカリをもたらすような存在になることを祈りたい。


 でもきっとそれは、いっしょうけんめい考えたり、悩んだり、対話したり、
 行動したりする中から、その可能性が見えてくるものなのだろう。


 ヒカルたちはこの「修学旅行」を通じて、きっといろいろと考えてくれたに違いない。
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by yoizukisaene | 2015-09-09 10:12 | さえね先生 | Comments(0)
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静岡在住の歌人です。日々詠んだ歌を載せています。
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管理人プロフィール
《生まれも育ちも》
1984年、静岡県富士宮市生。
2006年3月、熊本大学文学部文学科日本語日本文学分野卒業。現在、静岡県在住。
2006年「短歌研究」誌掲載。
2009年「平成万葉集」(読売新聞社)入集。
2012年 歌集「高天原ドロップス」(文芸社)上梓。

《専門と専攻》
専門:日本古典文学(平安朝和歌文学)
専攻:「古今和歌集」とその表現

《師弟関係》
師事 安永蕗子
弟子 小海碧架
    まみ


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