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銀星亭~Villa d'Etoile en argent~

かぐや姫のものがたり


センセー、月が出ているよ。

 ―――ああ、たしかにほっそりとした繊月が校舎の向こうの西の山のそのまたはるか上に傾いでいる。


出ているねえ。


 すこし間をおいて。


…じつはぼくはあの月の都の人なんだ。

センセー、いつからかぐや姫になっちゃったの?

かぐや姫じゃないよ、かぐや王子。

王子でもないよ。

うん…

 ――と、月を眺める。思いつくままに。

「いづれの山か天に近き。」
「駿河の国にある山なん天に近き。」

 ――どの山がいったい天に近いのか。
 ――駿河の国にある山が天に近いと申します。

ならばそこで、と、不死の薬を焼いてしまうんだねえ。だから富士山。

ほええ。

不死の薬だよ。すごいよね。かぐや姫のいない世の中など生きていても仕方がない、不死の薬などなんになろうか。不死の命などなんになろうかというんだよ。

考えてみれば、火ねずみの皮衣、天竺の鉢、蓬莱山の金の枝、燕の巣の子安貝…今にしてみてもすごい宝物でしょ。それがかぐや姫が得られなければ、愛する人がいなければ、意味がないっていうか、みんな空しきものになってしまうんだね…。

すごいね。

今に通じる普遍の真理っていうか…だから、「物語の出で来始めの祖」って呼ばれてるんだろうね。かぐや姫の物語は。


センセー、なんか、切なそう。


…そうか?





ああ、うたがつくれない。
ことばがでてこない。
どうしてしまったんだ、ぼくの脳みそは。
言葉に対する感性が死んでしまったのか…。
ああ、うたがよみたい。うたが。


初鳴きのそのときから蝉のカウントダウンは始まっている


だめだ、こんなのうたじゃない。

陳腐だ。
陳腐だ。
陳腐だ。

ああ、うた。
by yoizukisaene | 2008-06-06 19:41 | さえね先生
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静岡在住の歌人です。日々詠んだ歌を載せています。

by よいづきさえね
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《生まれも育ちも》
静岡県富士宮市生。
熊本大学文学部卒業。
2006年「短歌研究」誌掲載。
2009年「平成万葉集」(読売新聞社)入集。
2012年 歌集「高天原ドロップス」(文芸社)上梓。

《専門と専攻》
専門:日本古典文学(平安朝和歌文学)
専攻:「古今和歌集」とその表現

《師弟関係》
師事 安永蕗子
弟子 まみ


《著作一覧》
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