銀星亭~Villa d'Etoile en argent~

<   2009年 10月 ( 6 )   > この月の画像一覧

大切なものが明日も変わらずあり続けるとは限らない。

 オリオン座流星群のあった夜、我が家の飼い猫、ボンちゃんが車にはねられて死にました。

 ボンちゃんは我が家で生まれた猫ではなく、生後1年くらいの時に我が家へひょっこりとやって来た流れ猫でした。

 3年前の年の瀬に、その猫は我が家へやってきました。
 汚くてちっちゃくて、声も濁っていてよろめきながら歩く、「たどり着いた」という表現がぴったりの瀕死の子猫でした。
 年末の忙しい時ですからこちらもろくに対応しなかったのですが、次の日、私の住む町には冬の大嵐が吹き荒れたのです。
 「こんな嵐の日にあんなよろよろした子猫じゃ、きっと死んじゃうだろうなあ…」と思っていましたが、翌日、外へ出てみると、「ニャア」と汚い声で鳴く猫がいます。ボンちゃんでした。
 ボンちゃんは納屋の方で何とか雨風をやりすごすことができたのです。

c0103551_15152223.jpg


 嵐の夜があけたとき、不思議なことが起きていました。

 他にも何匹かいた我が家の猫たちが、ボンちゃんを受け入れていたのです。
 ぼろぼろの姿でボンちゃんが初めて我が家の庭にやって来た時、汚いアヤシイ見慣れないヤツが来たぞ!警戒せよ!という感じで「フーッ!」などと威嚇していたことがウソのようです。
 ボンちゃん自身も平和主義者とみえて、野良猫にありがちな喧嘩腰な姿勢ではなく、じっと静かに待機しているような猫でした。あの冬の嵐の夜に、猫たちの間できっと話し合いがついたのでしょう。


 年が明けて、寒空の下、ボンちゃんは死にませんでした。
 それどころか毎日エサを食べて、少しずつ元気を取り戻してゆくようでした。
 しかし汚い毛皮とダランと垂れ下がったような左目のできもののような部分はそのままでした。
 子猫なのに何ともきたない姿でかわいそうに…と思ったわが家の人々は、ボンちゃんを獣医さんに連れていくことにしました。

 1泊2日の入院が終わり、みんなで迎えに行くと、看護婦さんがにこにこしながら真っ白なペルシャのような美猫を抱いてでてきました。「きれいになりましたよ!」

 驚いたことに、汚れを落とし、できもののようなものを切除したボンちゃんは王子さまのような高貴な姿に生まれ変わっていました。びっくり仰天した私たちに、看護婦さんはさらに驚くことを告げたのです。
 「この子は、もう1歳のオトナ猫ですよ!」
 ボンちゃんはもう大人だったのです。でも栄養が足りなかったせいで大きくなれず、まるで子猫のように見えていたのです。

 我が家に帰還したボンちゃんはまた静かに座っておとなしくしています。

 ボンちゃん、大変な目にあって来たんだねえ・・。

 ボンちゃんは小さな濁った声で「ニャア」と泣きました。猫用の声ではなく、人間向けの声でした。
 思えば嵐の夜もよたよたと姿を見せたり、出迎えようとしたりするなど、ボンちゃんは人を嫌わない猫でした。
 この子は、きっと小さいころ人に飼われていたんだろう。
 それが捨てられるか迷子になるかして、やがてカラスに目をつつかれるなどして片目を失い、やっとの思いで我が家に来たんだろう。
 もとから野良猫ならまだしも、かつて人に可愛がられていたのだろうと思うと、小さくなって眠るこの白猫が、一段とふびんでたまらなくなりました。

 協議の結果、私たちはこのふびんな子猫に「ボンちゃん」と名付けました。隻眼の戦国大名・伊達政宗の幼名「梵天丸」の「梵」、そしてフランス語で「善い」という意味の「Bon」から取った名前でした。
 同じく片目の軍師・山本勘助から取って「カンスケ」という案もあったのですが、これは却下されました。

c0103551_15155282.jpg




 「ボンちゃん」という名前をもらった碧眼長毛の片目猫は、次第に平穏な毎日に溶け込んでいきました。
 しかしエサを食べるときなどは誰よりも早く皿の所に駆け寄り、他の猫に譲らないように食べるとか、機会をとらえては何か食べているなど、「食」への貪欲な姿勢はずっと変わりませんでした。
 きっと小さいころ食べ物のことで苦労したせいで、もはやそういった性質が身についてしまったのでしょう。


 ここにいれば慌てなくても食べ物は充分にもらえるんだよ・・・。

 もういじめられたり怖い思いをすることもないんだよ・・・。

 声をかけると、チラッとこちらを見上げますが、またもくもくと食べ始めます。

 おかげさまでボンちゃんは徐々に大きくなっていきました。
 それとともに、しだいに氷が溶けてゆくかのごとく、私たち人間にも慣れていきました。「ニャア」と出迎えて鳴くその声は、相変わらず濁ったままでしたが。
 
 穏やかで満ちたりた日々はそれから2年あまり続きました。

 あの、月のない夜の闇が道を閉ざしたその日まで。
[PR]
by yoizukisaene | 2009-10-30 15:16 | 今日のなんでも | Comments(1)

はじめまして。キセノンの弟、ケンノンです。

c0103551_10161161.jpg

名前の由来は小さいころすごく剣呑だったから。でもいまはなかなか愛想のいい猫です。

[PR]
by yoizukisaene | 2009-10-10 10:15 | 今日のなんでも | Comments(0)

夜のつきかげ


白露の玉散れる野の露草が眠りに落ちる頃の月影

c0103551_10435974.jpg


水面なる水の輪数えゆく夏のおわりの時をただ過ごしたり

[PR]
by yoizukisaene | 2009-10-06 10:43 | 今日の歌 | Comments(0)

雑詠4首


静かなる午後の日曜散歩する街で愛想のいい猫にあう

人ごみはキライ誰かの悪口を聞くのもイヤな我もやなひと

悪いことしていないのに吠えるから犬はキライでねこはすきなの

オルガンの練習してる幼子の家の坂道のぼりきる/海
[PR]
by yoizukisaene | 2009-10-03 10:42 | 今日の歌 | Comments(0)

散歩


車ではじつにつまらぬ街だけど歩くよろこび世界はむげん

まず鳥の声

風のにおい

川の音

すれ違うおばあちゃん

みずたまりの中の雲 青空

いろいろなにおい

人の気配

軽く汗ばむほどの生のたしかさ
[PR]
by yoizukisaene | 2009-10-02 10:41 | 今日のうろちょろ | Comments(0)

キセノン成長日記。

c0103551_1024129.jpg

けっこう大きくなりました。
[PR]
by yoizukisaene | 2009-10-01 10:23 | 今日のなんでも | Comments(0)



静岡在住の歌人です。日々詠んだ歌を載せています。
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
最新のコメント
人生は一日一日の積み重ね..
by 通りすがりの名無し at 01:28
お悔やみ申し上げます。 ..
by yoizukisaene at 15:31
馬鈴薯の花摘みながら 振..
by 通りすがりの名無し at 00:28
小さい鍋でつくる味噌汁、..
by yoizukisaene at 07:12
4月。新年を迎えたような..
by 通りすがりの名無し at 01:42
ご来場いただきありがとう..
by yoizukisaene at 18:12
学校という場所にいること..
by yoizukisaene at 19:29
卒業生のみなさん 卒業..
by 通りすがりの名無し at 06:21
ありがとうございます。1..
by yoizukisaene at 16:11
お久しぶりです!通りすが..
by 久しぶりの名無し at 15:20
管理人プロフィール
《生まれも育ちも》
1984年、静岡県富士宮市生。
2006年3月、熊本大学文学部文学科日本語日本文学分野卒業。現在、静岡県在住。
2006年「短歌研究」誌掲載。
2009年「平成万葉集」(読売新聞社)入集。
2012年 歌集「高天原ドロップス」(文芸社)上梓。

《専門と専攻》
専門:日本古典文学(平安朝和歌文学)
専攻:「古今和歌集」とその表現

《師弟関係》
師事 安永蕗子
弟子 小海碧架
    まみ


《著作一覧》
最新のトラックバック
047:持 より
from 楽歌三昧
佐野北斗さんの歌
from 麦畑(題詠blog用)
検索
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧